2012年4月12日木曜日

社協会費、共同募金、赤十字寄付金の自治会一括強制集金
  このままで良いのか。 
        ― ある自治会の一括集金排除への取組み ―
  これら社協会費・共同募金等については、誰もが任意の献金だという認識をもっています。
しかしながら、自治会費一括集金が強制だとの認識が薄いようです。近所のお付き合い程
度のとらえ方です。個人の任意意思を行使しにくい集金方法を取ることは、強制です。社協
会費、共同募金、赤十字寄付金において、この強制集金が献金協力の名のもと推奨され
実行されてきました。長い慣行となり定着していますので、私たちの自分の意識を変革しな
ければ、この改善は意外と困難です。裁判に持ち込まれるくらい意識が分かれる状況ともな
っているようです。
 こんな状況下、私の知る自治会で、ようやく手を付けたのです。理事会の方々の変革意
と1年間の長い詰めた論議がありました。

〇他団体会費募金等を自治会費に一括して集金することの問題点は、以下の諸点です。
1.他団体会費募金等納入の個人意思を確認できない。
   (個人意思確認を慣行上していない)
2.献金していることの意義の自覚が伴わない。
3.誰がいくらした出したのか、周りに知れてしまう。
4.自治会役員(隣人)が集金しているので、自分だけ断りにくい。
5.自治会費に組み込まれているので、断ると会則違反となる。
6。右に倣っておこうという処理は、自らの倫理観を麻痺させていく。
7.人の権利を侵す事に鈍感になる。(放置することはそういう事です
8.これらの結果、倫理観のない組織が増えたりして、地域社会がくずれていく。
    (危惧では済まないでしょう)

〇千葉市社会福祉協議会の見解です。
 社協会費、共同募金、赤十字寄付金は同質の寄付金で、全て各地の社会福祉協議会が
 窓口です。当地では、千葉市社会福祉協議会(市社協)が対応しています。
 社協会費の集金に際しての見解を以下要旨で出しています。(最近のものです)
  ・社協会費を自治会費と一括で集めることについては、集金する自治会で確認がとれ
  いれば問題はない。                                      
  ・集金に際しては、社協会費は任意であることの確認を取るよう自治会等にお願いし 
   ている。                                              
     
  この両方を満たすことは難しいです。矛盾です。一括で集める事=強制です。任意を担保
   したら一括徴収出来ません。これを平気で言う方々が、福祉を実践するのでしょうか。
 自治会費の中から社協会費募金等を納めたくないという意思表示をどれだけの人ができ
  るのでしょうか。集めているのは、その時役を担っている役員で、近所の方。満額納入しな
   い場合は自治会の会則違反に問われます。
 近所のしがらみをうまく利用してきたのが、社協会費、共同募金、赤十字社寄付金です。
   自治会は、長年これらの効率の良い集金マシーンだった、いや今もです。
                     
●私の知る自治会で、社協会費・寄付金等一括徴収の見直しを断行しました。
  自治会では、平成23年度(昨年度)に自治会費にくるめた他団体会費募金等
 集金について、今までにない踏み込みをし、自治会費から他団体寄付金を分離し
 た。小さい金額ですがやったことはとても大きなことです。今まで続けて来たことの大変
 革です。情報収集と論議を積み上げたようです。

1.社協会費募金等の一括集金見直しの論議経過です。
  
 〇平成23年4月
   自治会定期総会において、その時の理事会が次の理事役員に次のように申し送
   りました。(議案書議案として可決)                    
   『 社協会費、共同募金、赤十字社社資の集金方法を見直し、個人の意思に基づく
    力金・寄付金として集金する方法を検討する。また、これら会費、募金、社資を 
    計予算項目から削除すること及び自治会費に組み込まないこと(会則改正を含 
    )を検討する。』(抜粋)                                   
  
 〇平成23年5月~11月
   上記申し送りを受けて平成23年度理事会で慎重に論議したようです。
   この論議の中で、以下の事が判明したのです。
   ・滋賀県希望ヶ丘自治会を相手に会員が起こした訴訟における
    社協会費等の自治会一括徴収についての裁判所判決。
      (平成20年、最高裁棄却によって大阪高裁判決が確定。)
   
    以下その判決文です。(争点に対する大阪高裁の判断)       (抜粋)
   『 会員の態度、決定を十分尊重せず、募金及び寄付金の集金にあたり、その支払
    い事実上強制するような場合には、思想、信条の自由の侵害が生じ得る。もっと
    も、思想信条の自由について規定する憲法19条は、私人間の問題には適用される
    とは解されないが、上記事実上の強制の態様からして、これが社会的に許容される
    限度を超えるときには、思想、信条の自由を侵害するものとして、民法90条の公序
    良俗違反としてその効力を否定される場合があり得るというべきである。』     
   『 募金及び寄付金を一括して一律に会費として徴収し、その支払いをしようとするも
    のであるから、これが強制をともなうときは、会員に対し、募金及び寄付金に対する
    任意の意思決定の機会をうばうものとなる。』                      
   『 募金及び寄付金に応じるか否か、どの団体等になすべきか等について、会員の任
    意の態度、決定を十分尊重すべきであるにもかかわらず、会員の生活不可欠な存
    在である地縁団体により、会員の意思、決定とは関係なく一律に、事実上の強制を
    もってなされるものであり、その強制は社会的に許容される限度を超えるものという
    べきである。』                                         
     
   ※高裁の判決文はこちらです。
    http://www.tanukikun.com/Hanketu_2008_8_24_Kousai.pdf  
   ※「社会的に許容される限度」で曲解する向きがあります。自治会で一括収する
    寄付金2000円が高額だから、社会的に許容される限度を超えたのだと。裁判の
    争は、寄付金の自治会での一括徴収が適法か否かにありました。判決文では、
    任意の意思決定の機会をうばう、「その強制は社会的に許容される限度を超える
    もの」と明解です。
   ※これを裁判で争わなければ成らない程に、私たちの意識見識が低下していると
    いうことです。原告には、消耗戦だったと思います。ご苦労様です。
   ※こちらの佐倉市の方のブログは詳しいです。(判決・一括徴収・社協に関して 
    http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2010/11/post-1838.html     
    http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2007/08/post_6d09.html
   ・この判決を受けて、全国社会福祉協議会が各都道府県社会祉協議会あてに
    以下の通達を出しています。(平成20年4月)
    『 社協会費は、あくまでも任意であることを住民に理解していただける方法に
     するように、自治会役員等に十分説明していく事が重要 』
    『 自治会費と一括して会費を集める場合、自治会に加入していれば、社協会費
     も支払わなければならないという誤解を与える可能性も否定できない。この
     ため、社協会費専用の封筒を用意するなどの工夫が必要である 』(抜粋)
   ※全国社会福祉協議会の通達はこちらです。
    http://www3.shakyo.or.jp/cdvc/data/files/DD_01111455202620.pdf
   ※中央共同募金会においては、募金は匿名、金額不明(他人に分からない)
    用の専用募金袋等は用意されています。
    上記全国社協の通達は、矛盾です。

〇平成23年12月
  論議を重ねて、自治会理事会は以下結論を出し、自治会員に文書配布しました。
      
・自治会として、社協会費、共同募金、赤十字社寄付金を個人意志を確認することな
 く、一括して自治会費から納めることの違法性を確認した。本理事会の判断で、本
 年度よ速やかに適法な方法に改める。総会に諮らず理事会判断で対処するの
  は、問題は自治という集団の活動ではなく、個人の外部団体への募金であるか
  ら、総会での論議や決議で決められるものではない。
・社協会費募金等は、不同意者の自由を侵害してまで自治会全員が一致した行動を
 採なければならない理由はない。
・すでに自治会費に含めて5月に集金している社協会費、共同募金、赤十字社寄付
 金は個人意思の確認(同意、不同意)を行い、同意者分は自治会費から各団体に
 払い込み、不同意者には返金する。
 ※不同意者へ返金されました。
 
〇平成24年4月
  自治会総会にて議案書どおり以下の決定をみました。
 
 ・自治会費から、社協会費、共同募金、赤十字寄付金を除き、その相当分金額を
  自治会費から減額する。(会則会計規定改定)
 ・共同募金、赤十字寄付金については、個人意思を確認のえ集金に協力して
  いく。
 ・社協会費については、自治会は集金しない。会員募集も行わない。
  『 社協会員募集と会費徴収は、自治会が社協・地区部会に協力する形で運用
   してが、自治会本来の活動ではないので、社協会員募集・会費集金は行
   わない 』                             (抜粋)
   地区部会が自ら集金し、会員募集することになります)        
 
 ※総会では、この提案に地区部会関係者から反対意見がありました。反対の意見は、
  地域福祉をどう考えるのか、地域協力をどう考えるのか、と訴え、これまでの協力関
  係(自治会での社協会費集金)維持が主張でした。出来る事は他組織を頼ってはい
  ないでしょう。社協の地域組織・地区部会なのです。自らの組織会費を自らで集めない
  のは、繰り返しますが変です。既に隣接自治会では社協会費の集金を返上しています。
  (1自治会)
 ※共同募金、赤十字寄付金の集金窓口は、市社協が代行しています。市社協に直接
  納金します。社協会費のみ、地区部会を通して市社協にいきます。領収権は市社協
  にあります。

2.社協地区部会とのかかわり
  自治会総会で理事会は次のように整理した見解を議案書に盛り込み議決されました。
  
  社協地区部会とのかかわり方について
 
  ・自治会は、市社協の会員募集は行わない。
  ・自治会は、市社協会費を徴収しない。
  ・地区部会への理事や代議員の派遣は、自治会において会則の重要事項に
   する議案として提案し承認されてきたわけではない。地区部会に協力するとい
   う年度の活動計画で承認されてきただけである。今後は自治会の「地域福祉」
   への取り組み内容を議論・決定し、その結論に応じ地区部会とのかかわり方を
   決定する。
  ・平成24年度は、従来の慣例に準じて自治会から地区部会に理事と代議員を
   派遣する。

※すっきりしていますが、地区部会が独立団体なのか市社協の内部組織なのか、また単
 なる有志ボランティア組織なのかも見極めてほしいです。
※現在、地区部会に周辺自治会が理事、代議員を出しています。自治会は地区部会の
 団体会員ではないのですが、この理事、代議員派遣は自治会決議もなしに10年間もし
 てきました。地区部会役員が自治会役員であった地区部会創立頃に、自治会できちん
 とした組織確認なく、地区部会から要請された理事、総会決定要員としての代議員を送
 ったようです。支援、協力の意味あいがあったのかもしれません。組織は別であり、運営
 上の混同をしてほしくありません。このようなことは活動協力の域を超えています。このお
 かしさを指摘する会員も時にありましたが無視されてきました。自治会の役員は、一
 ごとの輪番で交替することもあり、問題意識をきちんと持てない中、前年踏襲でこれま
 きたのです。
  
ー市社協・地区部会について解説・疑問ですー
〇市社協会費を払うと市社協の会員となります。募金ですから加入手続きなく、領収書
 もありません。(用意はされているようです)市社協における資格・権利はありません。
 ですが、地区部会への加入とみなされます。加入手続きはありません。会費とは名ば
 かりの募金で地区部会の会員になるのは変ですが、市社協内規の地区部会設置規
 定によると地区部会役員の選挙権資格がつきます。私の知る地区部会では会員に役
 員選挙権がなく、代りに自治会に代議員が割り当てられています。(自治会員の多くが
 地区部会会員だという理由らしいです。自組織の会費を集めないのは、その組織意義を
 自覚した会員を募らないのと同じです。組織会費の集金は、会員に組織を意識してもらう
 意味があります。)
〇地区部会が市社協の内部組織なのか外部組織なのかは私には不明です。
 市社協では、市社協の趣旨に賛同する地域自発団体としています。単なる有志ボラン
 ティア組織にもみえます。
〇市社協が会費を領収し、活動交付金が地区部会に出ます。地区部会は独自会費を集
 めません。これは市社協内規の地区部会設置規定に準じています。
〇各地区部会に相当額の繰越金があります。
私の知る地区部会は約200万円です。これはほとんど市社協からの交付金の残りです。
単年度決算をせず、残額を引き上げていません。市社協には市から相当額の助成金が
出ており、私たちの税金が回っているとも言えます。埋蔵金でしょうか。
※市社協や地区部会を否定しているのではなく、理解できる組織、地域活動であってほ
 しいので、その不思議な組織を見つめています。